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目の前にデブがいる。
衣服は何も身につけていない。
そのデブは鉄格子がはめられたコンクリート打ちっぱなしの檻に入れられていた。
豚のように丸々とした体は、成人男性三人分以上ある。その柔らかい肉は溶け出したソフトクリームのように半液状化し、地面と一体化しているように見えた。
一応女のようだが、乳も腹も顔もぶにゅぶにゅしていて境界線がわからない。一つの塊のようだ。醜くて目も当てられたもんじゃない。
「あっ和行さんおはようございます」
和行に気が付いたデブが檻からこちらをのぞいた。
「気安く名前を呼ぶんじゃない、デブ」
悪態をつきながら檻を開け中に入る。
昨晩から今朝までに出した糞尿をほうきとモップで綺麗にする。好んでやっているわけではないが、このご時世いろいろな事情でやらなければいけない事がある。
「おかげさまで昨日はよく寝られました。和行さんが一生懸命体を拭いてくれたから。なんだかんだ言ってやっぱり和行さんって優しいですよね」
嬉しそうな口調で話すデブ。
頬についた肉で押し上げられた目は、いつでも笑って見える。悲しそうなことを言う時も、語気を強めている時も、もちろん今もそうだ。
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