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俺は大して頭が良くないから、それなりに頑張って、それなりの大学に入れればいいと思っている。でも、春菜は違う。軽音部という繋がりがなければ、俺と春菜は話すこともないまま高校時代を終えていたと思う。それくらい、俺たちは正反対のふたりだった。
黒髪、眼鏡、膝丈スカート、って地味すぎる見た目の春菜が初めて部室に来たときは目を疑った。成績優秀者として見たことのあったその名前にも驚いて、来る場所を間違えたんだと思った。でも、俺の好きなバンドを春菜も好きだって聞いて。しかも、それがきっかけでベース弾いてみたくなったって、始める理由まで一緒で。距離が縮まるのはあっという間だった。
眼鏡の奥の瞳が綺麗だとか、艶々な黒髪が揺れるとすごくいい匂いがするとか、好きなバンドの話をしているときの表情は意外と幼くて可愛いとか。そういうところは俺だけが知っていればいいと思った。それが恋心だと知って、告白して、オッケーもらって。そろそろ付き合って二年が経とうとしていた。
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