セツナラセン ~金木犀の涙~

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「わかった」  何もわかっちゃいないけど。わかりたくなんかないけど。今はそうするしかないと思った。受験が終わったら、春になったら、もう一度告白すればいい。 ♫♪♫  アキちゃん――春菜にフラれた日の帰り道、歩道橋の下で(うずくま)って苦しそうにしていた女の子――にもらった曲を何度も聴いていた。去年の夏、ふたりで行った海が頭の中に浮かぶ。揺らめく水面に反射する光が眩しいと目を細めた春菜も、潮の匂いに混ざる髪の匂いも、静かな夜の浜辺で重ねた唇の温度も、昨日のことのように思い出せる。  また行きたいと言っていたけれど、今年は予定が合わなくて行けなかった。じゃあ、来年は。恋人でなくなってしまったら、そんな約束もできなくなってしまうのか。最近では学校でも避けられている気がして、顔を見ることも声を聞くこともできなかった。 ……この曲、その彼女にあげてみたらどうかなって。何かきっかけになるかも  アキちゃんの言葉をふいに思い出す。曲のデータをただ送るだけではなんだか味気なくて、できればふたりで聴きたくて。待ち伏せなんてストーカーみたいだと思ったけど、そうでもしないと会えない気がした。
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