セツナラセン ~金木犀の涙~

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「ごめん、フユト。私ね、好きな人ができたの。フユトじゃない人。だから……」 「じゃあ何、最近会えなかったのはそいつと浮気してたってこと?」  春菜の両肩を掴んで、問い詰める。俺がずっと会いたかったそのときに、春菜は…… 「違うの。その人には私の気持ちは伝えてないし。ただ、このままフユトと付き合うのは、フユトに失礼だと思って。だから、ごめん」 「そっか……」  両目に涙を溜めながら、その涙を零さないように耐える春菜にもう何も言えなかった。真面目な春菜らしい決断だと思った。涙を拭ってやりたかったけど、きっと春菜はそれを望まないだろう。 「今の曲、気に入ったなら後で送っておくよ」 「うん、ありがとう」 「春菜。俺さ、めちゃくちゃ好きだったよ」  ありがとう、と笑った春菜の瞳から涙が零れた。 「引き留めて悪かった。気を付けて帰って。おやすみ」  くるりと春菜の体を反転させて、背中を押した。春菜はおやすみ、と小さく手を振ってから歩き始めた。角を曲がるところまで見届けて、その場に座り込む。コンクリートに丸い染みができる。  こんなことになるなら、もっと好きって言っておけばよかった。  金木犀の香りが甘くて、甘くて、涙が止まらなかった。 to be continued…… 『リレーバトン、春菜へ✎*。』
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