納涼的な夏の思い出

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 夏休みのカンカン照りの日に卓也君はお父さんと宿泊していた旅館から程近い海浜を訪れました。海面は太陽光を目一杯浴びてほとんど風を受けない為、ぎらぎらと光りながら鏡面のように凪ぎ、砂浜は陽炎が立ち上る位、熱くなっていました。その時、水平線上に大きな帆船が逆さまに浮いて現れました。それにお父さんと眺め入った卓也君は、驚いて言いました。 「あれれ!船が空中でひっくり返ってるよ!」 「あれは幽霊船だ!」 「えっ!幽霊船!」 「そうだ。幽霊が舵を取ってるから水面じゃなくて空中に浮かんで尚且つひっくり返るんだ。つまり、人間が舵を取る船とはあべこべの現象が起きるんだ。」 「へえ~、そっかあ・・・」と不思議に思いながら怖がる卓也君にお父さんは言いました。 「そら、幽霊は足がないから空中を浮いて移動するだろ。それと同じ原理で空中に浮くんだ。」 「だけど幽霊は逆立ちして移動はしないよ。」 「当り前だ。そんなしんどいこと態々するもんか。」 「それじゃあ、幽霊は何で船を態々ひっくり返して移動するの?」  この質問にお父さんはちょっと弱りましたが、すぐさま閃いて、こう答えました。 「それはな、弱って海面に腹を出して逆さまに浮遊する魚と一緒で幽霊も弱ってるから幽霊に憑かれた船もひっくり返ってしまう訳だ。」 「あっ、そっか、なるほどなあ・・・」と卓也君はここにおいてびびりながらも納得しました。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!