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プロローグ
成り行き……と、言うか。
颯人にフラれた直後だった為、きっと全てがどうでも良くなってしまっていたのだ。
あの日私は、私に声をかけてきた見知らぬ彼とホテルに入ってしまった。
その彼の手指は細く繊細で、そして悪戯なものだった。
私の胸元周辺を這い回らせて、膨らみを上って来たと思えば先端の敏感な部分には触れないし。
そして私の脚、ふくらはぎ辺りから焦らす様に大腿部の内側に来たと思えば、鼠径部は素通りして下腹部を撫で廻すという。焦らしも焦らす意地の悪さ。
そのくせ女性の様に柔らかな唇は最後まで私の唇に重なり離れず、長い舌で私の口の中を撫で回して、口内を唾液で満たした。勿論、少しも溢さず吸い尽くしてはゆくが。
太股を伝うだらしない私の恥蜜の感覚に自己嫌悪を覚えながらも、彼の白に近いブロンドの髪が私の首筋を撫でる度に、私は終始身悶えていた。
激しいようで、優しい。そんな彼の愛撫がひたすら続いたが、結局。彼のモノが私の中に入ってくる事はなかった。
私だけは何度もイってしまったのだけれど。
色々な感情で涙を流しながら────
ごくごく平凡な家庭に生まれた私、金沢恵子は今年で二三歳になったわけだが。
元カレ──颯人と過ごした一年程に関しては。今思えば、随分と良い人生を送れたと思う。
ただ。
彼──レイク・マクラーレンに関してだけは、関わって良かったのかと考えてしまう。
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