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「なかのラムネのあじがちがうの?」
「それは一緒だと思うわ。よおくご覧なさい。
瓶の口の途中に硝子玉があるでしょう。
その、色が違うのよ。」
じっと硝子瓶を見詰める。
「眩しすぎて見えないよ。」
売り子のオヤジは困ったように二人連れを見て
後ろを向いた。
青い瓶はきらきらとした陽の光を彼方此方に乱反射して涼しげな輝きに変えている。瓶の口に近い箇所にへこみがあって、本当だ、球(たま)が光の中を揺れていた。
ようく見ると、ほんの少しずつ色が違う様にも見える。
「おじちゃんこれを頂戴」
透明に近い色がしているように見えるのを、
手を泳がせて1本取り上げた。
連れ立った人は地面に転がった日傘を取って肩にかけ直している。
熱い日差し。
水飛沫。
午後の陽の向こうに虹が落ちた。
「ほいきた。」
売り子のオヤジはその一本を受け取り
素早く瓶の口を開けてくれた。
喉を潤すラムネ水は炭酸が強く、一息に飲もうとするとむせる。カラカランと硝子玉が瓶の口に落ちて来て、ラムネ水が喉に下りていくのを塞ぐ。
炭酸の強いラムネ水を咽せるまで喉に流し込みたい、という衝動を堰き止めるように、カラカラン、
と落ちてきては飲み口の手前で球は勢いよく傾けた手がラムネ水を喉元に流れ込むのを硝子瓶のへこみに嵌りこんで、蓋をしてその度に留めてしまうのだった。
初めてラムネ水を手にして飲んだ。
「こどもがラムネを飲む時に喉を詰まらせないようにこんなつくりになっているのだそうだわよ。」
連れ立った人はそう言った。
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