硝子球の映す

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メリーゴーラウンドの前には 沢山の硝子瓶を挿した水だらい。 いかにも涼しげなそれを欲しいと 連れだっている人の顔を見あげる。 3回位それを繰り返した後 根負けして硝子瓶を手に取っても良いと お許しが出た。 買ってくれるという事だ。 薄青い瓶は陽の光が反射してきらきら光って中にラムネ水を湛えている。 「おじちゃんひとつ。頂戴。」 連れだった人が小銭を売り子のオヤジに渡した。 「よし。好きなのを持ちな。おじちゃんが開けてやるから。」 たらいの中に手を入れるときいんと、冷たい。こぶしよりも大きくて透明な氷がぷかぷか詰まっているそこから手先へと火照りが退いていくようだ。 「よぉく、選びなさいな。色が少しずつ違うでしょう。」 連れだっている人も日傘を傾げでしゃがみ、水だらいに手を浸す。 「冷たいねぇ。」 日灼けをじりじりと助長するかに照り刺す陽光を 連れ人から除けていた日傘がくるりんと首の脇から肩を滑ってゆっくりと地面へと落ちた。 構わず二人して水だらいに両手を浸していた。 すると干上がりそうだった熱気がすぅと退いていくようでいつまでもそうしていた。 たらいの氷のなかに刺され並んだ瓶を眺めると、確かに。 光の具合だけでなく、青の色に濃淡が見える。 たらいの底は氷と冷えた青い瓶をとおった光がゆらゆら揺れている。
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