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その後 episode 1
理人と改めて付き合うにあたり、同棲を提案された。
そのほうが一緒にいられるし、毎日送り迎えが出来るから、という理由らしい。
一緒にいられることは嬉しいが、送り迎えは遠慮したい。
毎日3時半起き、いや、その前に起きて車で迎えに来るというのだからもっと前になる。
今までは休日前の金曜日だったから甘えていたところもあるが、毎日となるとそうも言っていられない。
「さすがに毎日送り迎えはちょっと・・・」
理人の負担が大きすぎると遠慮しても、譲ってくれない。
以前の帰宅途中の事故のことを気にかけているようだ。
(寝不足で理人さんが運転中に事故を起こしちゃうんじゃ・・・)
そう伝えても食い下がる。
「一度帰ってから眠れるし、俺は大丈夫」
笑顔でそう言われては、もう頷くしかなかった。
仕事前の理人との会話をママに話す。
「過保護~ね。でもかわいくてしょうがないって感じなんでしょうね」
自分たちの関係をはじめから見ているママに言われると、なんだか恥ずかしい。
「送り迎えがつくのは私としても安心だから賛成だけどね」
過去の事故のことを、ママはまだ少し気にしているようだった。
好きな人と一緒に住む。
どんな感じなんだろう。
毎日理人さんとご飯を食べ、行ってらっしゃいとおかえりと、おやすみを言う。
想像するだけでふわふわとあったかい気持ちになった。
「荷物、少ないね」
引っ越し作業をしていると理人に声を掛けられる。
もともと施設から持ってきたものは少しの衣類だけだし、一人暮らしをして増えたのは家電と本くらいだ。
部屋も狭いからあまり物を増やさないようにしていたのもある。
理人の家に越すので、家電は全部リサイクルショップに出し、身の回り品だけを段ボールに詰めていく。
衣装ケースが2個、本や雑貨を詰めた段ボールが2個。
どうせなら、と本棚は理人の家に新しいものを買ってもらった。
「これで終わり?」
段ボールを車に積み込んだ理人が問う。
引っ越し業者を使うまでもない荷物の量なので、理人が車で運んでくれる。
「はい。あとは鍵を返しに行くだけです」
「ん。じゃあ管理会社に寄ってからうちに帰ろうか」
管理会社は家からは遠く、少し車を走らせることになる。
「はい。確かに受け取りました」
「ありがとうございました」
鍵を返却し退去の手続きがすべて完了する。
結局一人暮らしをした期間は1年ほどだった。
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