4話 いびつな関係

1/2
前へ
/97ページ
次へ

4話 いびつな関係

 キッチンでする物音に、悠司は目を覚ました。カーテンはいつの間にか開いている。ユイが開けたのだろうか。と考えて、すぐに気づく。  ……ユイがいない。  帰ったのだろうか。自分の隣には、既にユイの温もりが消えて、その代わりにペルシャ猫のリリがうずくまっていた。  シャツを羽織ってキッチンに行くと、妹の董子が朝食を作っている最中だった。厚焼き玉子をひっくり返そうとしている。董子の作る卵焼きは、本心を言えば悠司には甘過ぎる。砂糖を入れるのはやめてほしいのだが、董子がそちらの方が好きなのであえて黙殺している。どちらにせよ毎日作るわけではない。我慢は、出来た。 「あ、起きたの」  ちらりと悠司の方を見た董子は、なんだか機嫌が良さそうだった。尤も董子はいつだって明るい。 「おはよう」 「ねえ、兄さん。さっき宇佐見くんて子がいたんだけど」 「……ああ、宇佐見くんね」  そうか、ユイは引っ込んだのだ。宇佐見光が出てきて、起きない悠司を残して帰ったのか。もう少し一緒にいたかったが、光が出てきたのなら仕方なかった。 「なんで来てたの? 宇佐見くんて」  董子に聞かれて、悠司は返答に詰まった。 「あの子、ユイちゃんの関係者だよね? なんか似てるから、双子?って聞いたんだけど、違うって言われたよ」 「双子ね……まあ、似たようなもんだろ」  答えた兄に、董子はくすりと笑う。 「おんなじこと言ってた」 「――そう」  董子が楽しそうに光のことを話しているのが、なんとなく気になった。悠司は光のことは特別に好きというわけではないが、結局はユイと同じ人間だ。董子が変に興味を持つのは、あまり歓迎すべきではない。面倒なことになる。 「あのねえ、ママが兄さんのこと心配してたよ」  ……唐突に、  嫌なことを言われた気がした。悠司の表情が目に見えて強張るが、董子は気づかない。 「ユイちゃんて私と同い年なんでしょう? ていうことは、一応まだ未成年なわけじゃない。年も結構離れてるし、犯罪にならない? とか言ってたよ。馬鹿みたいだけどさあ、ほんと」 「何故あの人にそんなこと話す?」  若干きつくなった口調に、董子はようやく兄の異変に気づき、しまった、という顔をする。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加