たった一言が言えなくて。

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「あらいらっしゃい、ってまぁ。」 「こんにちは、おばあちゃん。」 大層驚きましたと言わんばかりの表情で、交互に僕達の顔を見る。 「初めまして...佐藤の彼女の高野です。」 「あら、初めまして。ここの駄菓子屋をやってるおばあちゃんよ。宜しくね!」 緊張しているのか、たじたじしながら応答する彼女をおばあちゃんはグイグイと質問責めにしていた。 「高野さんはどこが好きなの?」 「え?」 「ちょっとおばあちゃん、何聞いてんの!やめてよ恥ずかしい!」 親に何でも質問するような、小さな子どものような表情で何でも聞いてくる。困ったものだ。 「成功して良かったわね。私も安心しちゃったわ!」 「一生懸命、伝えて貰いましたから。」 「ちょっと!?」 「んふふ、お熱いのねぇ。」 この二人は本当に... と、ここであることに気付く。 「そういえば、あの代理店の広告は?」 前来たときは貼ってあった告白代理店の紙が無くなっていたのだ。 あの後もテレビやチラシで見たはずだが、最近は見なくなっていた。 「無くなったわよ?」 「え?」 ケロッとした表情で、何ともなしに言う。 そんな軽く言うのか。 「やっぱり、大切なことってちゃんと自分の言葉で言うべきなのよ。人に甘えて頼むなんで言語道断だわ。」 「やっぱり、そう思いますよね?」 「ええ、誰かを想うものなら尚更ね?」 どちらもこっちを見ながらニタァとした顔で含みを持たせながら言う。 まぁでも、 「自分で言うのも、悪くはないかもな。」 似た者同士の彼女らは、楽しそうに笑っていた。
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