たった一言が言えなくて。

2/5
前へ
/5ページ
次へ
とある場所を訪れた。 「いらっしゃいませ!ご予約の佐藤様ですか?」 笑顔の眩しい好青年の社員さんが迎えてくれた。 どうぞどうぞ、と綺麗な清潔感のある部屋に連れられながら、今日の目的を確認する。 「今回のご依頼内容は、女性の方への告白、で宜しかったでしょうか?」 「はい、そうです。」 頷きつつ、前のおばあちゃんの言葉を思い出す。 冗談のつもりだったのだが、話だけでも聞こうと思った次第だ。 「正直なところなんですが、こういう大事なことって人に頼んでも大丈夫なのでしょうか?」 自分自身、告白なんて他人から言伝でされたくはない。だが、実際自分ではする勇気などなかった。 「ありだと思いますよ?」 ニコニコしながら、たった一言返される。 商売相手に、不利益になるようなことなんて普通言わないよな...。 「では次に、計画の方を考えて行きましょう。」 あれよあれよと金額から設定まで持ち込まれ、話を聞くだけの筈が、あっという間に日にちまで決まってしまった。 こんなこと、ありなのだろうか。 僕にとっては一世一代の告白。 それを人に任せるなんて、余りにも無責任ではないだろうか? 一週間後に決まった計画だが、心の整理もつかないまま時が過ぎていった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加