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当日、待ち合わせ10分前に着いたが、既に彼女はいた。
結果待たせてしまったことに罪悪感をもちつつ、彼女に声をかける。
「ごめん待たせて、いつからいたの?」
「うんん、大丈夫。私もさっき来たところだから。じゃあ行こうか。」
手を引かれながら目的の場所へ向かう。
今日は彼女が行きたがっていた新しくできたスイーツ店に行く予定だ。
誘った友達は皆彼氏と行ったから、なんて理由で、予定の合った僕を誘ったのだとか。
僕の気持ちも知らないで無邪気な笑顔をしてケーキを食べるものだから、本当に罪深い。
「あ、そういえばさ、連れて行きたいところがあるんだけど...夜にそこへ行ってもいい?」
「いいけど、どこに行くつもり?」
「それは内緒、行ってからのお楽しみね。」
何それ〜、と笑いながらいつ注文したのかわからないパフェを頬張る彼女を横目に、ぬるくなったコーヒーを流し込んだ。
時が過ぎて夜、彼女の買い物に付き合ったためヘトヘトになりながら目的の場所へ向かう。
「わぁ、凄い綺麗...街が一望できるね。」
「でしょ?夜景好きって言ってたから喜ぶと思ったんだ。」
目をキラキラ輝かせながら喜ぶ彼女は、少年のような笑顔だ。
「あのさ...伝えたい事があるんだけど...いい?」
「え、いきなりどうしたの...?まぁいいけど...」
計画を実行する時が来た。
あの時話し合ったこと、それは告白文だ。
昔から国語が苦手で口下手なこともあり、中々自分の思いを相手に伝えることができなかった。
だから学生時代も、意見など問われても誰かと同じである、としか回答しなかったし、心の中に潜めたままでいた。
だけど、もういい加減、自分で思いを伝えたい。
だから代理店の方に文を考えてもらった。
自分じゃきっと、最高のものなんて作れないのだから。
「高野さん、僕は貴方の事が好きです。」
「...え?」
「初めて会った中学2年の春、転校生としてやってきた貴方に一目惚れをしました。」
困惑していた彼女も、真剣に聞いている。
「本を真剣に読んでいる姿はいつ見ても綺麗で、本が嫌いな僕にとっては凄い以外の言葉は見つかりませんでした。」
次の文はどうだったか、慎重に確認する。
「同じ高校に入りたくて勉強を頑張って、僕にとって遠かった通学路も、貴方と一緒に笑い合えたことだけで幸福な時間になりました。」
ゆっくり、ゆっくり、言葉を噛み締めながら。
「大学は流石に離れてしまったけど、それでもこうやってまた一緒に過ごしてくれてとても嬉しいです。」
「貴方と、これからも一緒にいたい。」
「付き合って下さい。」
暫く静寂が辺りを包み込む。
彼女の顔を俯いていて、表情はよくわからない。
「ごめん、なさい。」
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