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「では、末永くよろしくお願いします」
かくして私たちの恋活は幕を閉じ、本格的に婚活へ向かうことになった。
そして、晴れて本日、私――田中晴恵は二十歳の誕生日を迎えていた。
彼と絡めた私の左手の薬指には、先程頂いたばかりの婚約指輪が填められていた。
祝い事を重ねて、私たちは両家に婚約の挨拶をしに行く最中にある。
「こういう挨拶はどちらを先にするものなんですかね?」
送り出す親元の方が先なのか、迎える親元の方が先なのか。
「さぁ、なぁ。そもそもが色々すっ飛ばしてきてるからな」
お付き合いをしている報告ではなく、婚約をしている報告が最初になることまでは、私も考えてはいなかった。
「亮平さん、そういえば私、亮平さんに『好き』て言われたことが無い気がします」
「そうだっけ?」
確と頷けば、彼は照れたように頭を掻いた。
「何か、しっくりこないんだよ、その台詞」
どういう意味かと眉根を寄せれば、彼は私の耳元で囁いた。
「『愛してる』」
とっくにそうだったからと、彼は五月晴れみたいにカラリと笑っていた。
fin.
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