星育て

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 ルナルナのおじいちゃん。ヤードルードは、かつてたくさんの仕事をして、いまは引退して雲のはしっこで暮らしています。  なにもないひろいお庭に畑をつくって、星を育てているのです。  輝くことができなくなった星は、粉々の砂になって飛んでいって、世界の果てに降り積もっています。  ヤードルードは果ての海岸で、まだほのかに輝く星のカケラを拾い集めて畑に蒔いて、そうしてもういちど輝かせるために育てているのです。  はじめはルナルナも信じられませんでした。  だってそんなことは、聞いたことがないからです。  輝きを失った星は死んでしまったも同然で、まっくろになってもう二度と光ることはないのだと、大人たちはそう言っていました。  けれどヤードルードは、ただただほほえんで、せっせと畑に星を蒔いていました。  夜空を彩る星の光はいつだってピカピカの金色ですが、ヤードルードが集めてくる星のカケラは、ぼんやりと黄色く光る星や淡く白い光のものばかりです。  それは、夜空に見放されてしまった、たくさんのひとを楽しませる星にはなれなかったものたち。  屑星と呼ばれて打ち捨てられて、そのうちわずかにも輝くことがなくなってしまう、消えるのを待つものたちです。  ヤードルードはそうやって、まだ死んではいない星たちを拾っては、せっせと畑に蒔いているのです。  ひるまの太陽は、ひろい畑のすみずみまで光を分け与えます。  たくさんの光を受けて、星は鈍色(にびいろ)を放っています。  ルナルナにはわかりません。  こんなことに、いったいなんの意味があるのでしょう。  けれど実際に夜になってからは、畑の景色が変わりました。  暗闇に沈んだ畑のなかで、星のカケラたちが白くぼんやりと輝きを放ちはじめたのです。  ――ごらん、ルナルナ。星はまだ死んでいないのだ。  ――いまはこんなにちいさな光だけれど、太陽のちからをお借りして、いつかきっと天上の星となる日が来るだろう。  ――わしは、その手助けがしたいのだよ。
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