10人が本棚に入れています
本棚に追加
たくさんの光がルナルナの前を横切り、どこかへ飛んでゆきます。
星の実はちいさな輝きを放ちながら風に乗り、果ての海岸を飛び越えて、その先へ。
またたきながら、地上へ向かいます。
地上のひとびとは夜空を見上げて、おどろきました。
――わあ、たくさんの星が流れているよ。
――きれいだなあ。
果ての海岸から、ときおりこぼれ落ちる星は、ひとつかふたつ。
こんなにたくさんの星がいちどに流れるなんて、見たことがありませんでしたから、ひとびとはいっせいに夜空を見上げました。
このときばかりは、美しいかたちをつくる星座も、なによりも光を放っている一等星も、目に映らなくなります。
つぎつぎに降りそそぐ星たちに、ひとびとは瞳を輝かせました。
わあ、すごいなあ、きれいだなあ。
そのようすを空から眺めていたルナルナもおどろきました。
星使いたちが「役にたたない」と笑った屑星が。
あの、ちいさな光でしかない星たちが、ひとびとを楽しませ、よろこばせるだなんて。
夜空に星があることはあたりまえで、わざわざ見上げるひとはすくなくなりました。
けれど、夜空を飾れなかった弱い星たちが、こんなにもひとびとのきもちを惹きつけたのです。
畑から飛び立っていく無数の星たち。
星使いたちも作業の手を止めて、茫然とそれを見送ります。
弱った星がすべて落ちてしまうまで「星降り」はつづき、地上のひとびとも、雲の上のひとたちも、みんなみんな、それを見つめていました。
星が綺麗な、静かな夜でした。
最初のコメントを投稿しよう!