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ひと夏よ、涼しくなれ。
ひと夏、ふた夏と人々は過ぎ去る夏を見つめてはその到来を待ちわびる。しかしながら、人々はいざ夏が来ればその終わりをすぐに求め始めるものだ。
「今年、なんか…おかしくない? 例年と比べても熱いんじゃないかな?」
アイスを両手に持つ少女はそれを交互に舐めていた。少女の名前は白幡涼だ。
涼は自分のアイスだけでは飽き足らず友人である橘高悠鈴のアイスも店員からかっぱらったのだった。
「おい! 私のアイスまで食べるんじゃあない。それに舐めるとか最低だわ」
「よらないでよ。暑苦しいなー」
「よらせてるのはどこの誰かしらね!?」
悠鈴からの熱いツッコミが涼に飛来していた。このままでは自分のアイスも溶けてしまうのではないかと危惧した涼は仕方なく冷却物質こと、アイスを手渡した。
もちろん、そのとき小さくなった方のアイスを渡す。気づかれまい。
「ねぇ…ちょっと。これ、私が頼んだアイスではないんだけども」
「なんだって!? 店員さんが間違えたに決まっているわ! 今すぐ取り換えてくる」
なんとここで朗報だ。悠鈴に渡したアイスがなんと彼女が注文した味のものではないというのだ。
アイスをもっと食えると思った涼は踵を返して店に戻ろうとする。頭の中での妄想に三色のフレーバーが広がっていた。
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