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事の始まりは、それから十数年の歳月が過ぎまして………。
影丸が、満16歳になった頃の夏の日の夕べの御噺なのですが。
その日も、影丸は、夢之助と染花と一緒に村の裏手にある竹藪の中で、忍者としての修行に明け暮れておりました。
「………もうこれ以上は無理だよ、兄上。」
「………何を弱音を吐いている、影丸。お前は強くならなければならないんだ。そんな事でどうする?………さぁ、もう一度、かかって来い!」
すると、ふたりの様子を傍らで窺っておりました染花が口を挟みました。
「………兄上。今日はもう、止めにしましょうよ。日も暮れかかってますもの。それに、影丸も充分疲れている様ですから。」
「………仕方が無いな。」
そして、その夜………。
真右衛門は、珍しく影丸を屋敷の居間へとお声掛けをして、何やら打ち明けようとしておられました。その傍らには、民枝と夢之助、染花の姿も御座りました。
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