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──えっ?えぇッ!?
意味がわからずバタバタと後ろへ離れると、すぐ白い壁に背が当たる。
横になっていたのはオフィスのソファーでも、固い仮眠室のベッドでもない。
柔らかく肌触りのいいシーツに、太陽の匂いがする温かい羽毛布団。
さっぱりとしている部屋の中は、モデルルームみたいに全然物がなかった。
俺が意識飛ばしてる間に何があったんだ。
なんで寝ても覚めてもこいつは俺の前にいるんだ。
「─って、かここどこだよ!」
「俺の家」
「─はぁっ!?なんでっ、なんで俺までッ!」
「…全然起きないんで、置いとくわけにもいかないし。取り敢えずシャワー浴びたいからタクシー呼んで連れて帰りました。運ぶの大変でしたよ」
そ、そうですか…
親切にわざわざ。
お陰で俺は今ものすごく気まずいよ。
ヤったあと隣に人がいること自体あまり無いのに…気まぐれで抱かれた部下の家にどうして連れ込まれてんだ。
「体…拭いときましたけど、風呂入りますか?」
「え!?…い、いや、いいよ。悪い、迷惑かけた…仕事もあるし帰る。あ、タクシー代半分出すから…俺の鞄ある?」
起き上がろうとしたところ…白階の手が顔の横を通りすぎて、トンっと後ろの白壁を押さえた。
割り込むように足の間で膝を立てられる。
急に近くなった距離に動きを止めた。
動揺を隠そうと変な苦笑いを作る。
「な…なに?」
「昨日の書類なら片付けましたよ。主任が眠ってる間に、…あぁ、名前で呼ばれた方が嬉しいんでしたっけ」
「…え?」
反対の手が持ち上がり、そのまま頭の上に置くと…クシャッと寝癖で跳ねている髪を撫でた。
「…史」
「ッッ…!?」
触れた体温が、快楽を求め合った夜の記憶を思い出させる。
熱くなる顔を隠すように背けた。
言ったなッ…撫でて欲しいとか名前呼んでとかそんなこと!
なにやってんだ俺ッ。年下相手に、しかも部下に!
恥を晒して、醜態かまして、…もう、これ以上こいつにバカにされたら主任としてなんて見てもらえなくなる…!
目の前の白階の肩に手を伸ばすと、体を押し離した。
ピシャリと頭に触れる手を払い除ける…
「あのさ…俺セックス以外で触られんのも名前呼ばれんのも嫌だから。…いつも通り主任で頼むよ。
昨日は面倒掛けた。二度と無いから…なるべく早く忘れてくれ」
「……二度と…」
白階の腕から逃れて、ベッドから出ようとしたところ…不意にシャツの襟首を掴まれ、シーツの上に引き戻される。
勢い良く引っ張られて一瞬喉がしまった。
仰向けに倒されると、なにも言わずに白階の体が覆い被さる。
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