一晩の過ち

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…嘘だろ。どうしてこうなった? なんで俺なんだ。あっ…こいつも残業続きで溜まってたとか? 終電逃して戻ってきたし…そしたら俺みたいなのが『抱かれたい』だなんてぼやいてたから、憂さ晴らしにこいつ使ってスッキリするか、てきな? 嫌だよそんなの… 風俗にでも行ってくれ。 俺は気持ちよくても、優しくされないセックスは嫌だ。 「お…お断りします…」 「…何故ですか?」 「部下と、遊ぶ気はないんで…」 「……本気だったらいいんですか」 ──え? 白階は椅子から立つと、一歩二歩と近づき目の前に塞がった。 俺はビビって立ち上がることもできない。 イケメンって口説き文句にも余念がないんだな… 「っ、そんな尻軽じゃ、」 「俺上手いですよ。主任のセフレより気持ちよくして上げます。それとも…怖いですか?絶対痛くしないです。…優しくしますよ」 …優しく その安い言葉に顔が熱くなる。 元々、欲求不満だった体が人肌を欲してゾクゾクと震える。 「主任…本当は、触って欲しくて仕方がないんじゃないんですか」 白階の手のひらが頬に触れた。 …身を緊張させるも、その手の温度につい心地いいと感じてしまう。 耳の上を撫でられ無意識に目を閉じる。 …鏡原さんがキスをするときの合図が、いつもそれだったから… わずかに開いている唇の上を、白階の指先がなぞった。 「…本気で嫌だったら、思いっきり噛んでください」 「…え?」 次の瞬間…合わさった柔らかい唇と、こじ開けるように侵入してきた熱い肉の感触に息を奪われる。 のけ反る体を頭から押さえられ身動きがとれない。 逃げる舌を追いかけ回され、根本まで突っ込まれると頭の中が真っ白になる。 …キスってこんなに密着してるもんだったけ? あ、やばい、久しぶりすぎて呼吸の仕方忘れた… 「ん!んんっ!!?」 すぐに限界が来て白階のスーツを掴んで引っ張った。 口端から唾液が流れ落ちる。 苦しくて目に涙が滲む。 「…下手ですね。セフレはあまりキスしてくれませんか」 やっと口が放れた拍子に、ヒュッ─と喉を鳴らして肺に空気を流し込んだ。 白階のスーツをくしゃくしゃに握りしめたまま、そいつの腕の中でへなへなと椅子の背もたれに沈み込む。 「…こんな、長いの…しない…」 「じゃあ、ディープキスは俺が初めてですか」 しれっとした表情で息一つ乱れていない。 それどころか物足りなそうに目を細めた。 「…俺、主任を抱きたいです」 「っ…やだッ、やめ!」 再び後頭部を押さえられ、まだ呼吸を整えきれていないにも関わらず舌を入れられる。 嫌がって噛んだのにやめてくれない。 というか頭ん中ボーッとして全然力入らない… 白階の手が伸びて、ズボンのチャックを摘まみ下ろした。 …あれ、いつのまにベルトを外されたんだ…ろ… 下着の中に差し込まれた手が性器を煽り、ビクッと身を引きつらせる。 人の手に触られること自体久しぶりだった。 押し寄せる快楽の波に、堪えられず塞がれている口から声が漏れる。 「──んっ!ふっ、んン"ッ…!」 がくがくと勝手に足が震えた。 前を擦られると、後ろが物足りなくて疼いてくる。 や、もぅッ…イク、イクっ…! 「まだ…駄目ですよ」 ぎりぎりのところで手が放れる。 不意に止められた体の中の熱が、徐々に空しさへ変わっていく。 …いきり立ったそこが、早く達したくてダラダラと先走っていた。 「や…あ、っ…な、んで」 「…主任、選んでください。このまま椅子(ここ)でやるか、デスクの上か、ソファーを使うか…どこで抱かれたいですか?」 …あぁ、これは逆らえないやつだ 身体はすでに、この先の快楽が欲しくてどうしようもなく求めてしまっている。 我慢できない。 でも、だからって… 「…なんで、ここなんだよ…」 こんな煙草臭いオフィスじゃなくて、俺はベッドの上で優しくされたい…
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