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「監督。なぜ私がダブルスなんですか? 私はこれまでシングルスでやってきました。ダブルスだと勝てるものも勝てません。今からでもシングルに……」
「これは決定だ。お前は野中とダブルスだ。……上手いことバランスをとって、言葉を交わして慣れていけ」
それ以上、監督は何も言わなかった。
試合を終えて、離れたところで私の抗議をみていた野中へと振り返り、私は険しい顔をして野中に詰め寄った。
「あなた、初心者ね」
「う、うん。高校からはじめた」
「高校からねぇ……」
まず、ダブルスより前に野中の基礎能力をあげる必要がある。
クリアの伸び、スマッシュの威力、防御での返すコースの甘さ。
基礎能力をあげないととてもじゃないが、私の肩を預けることは出来ない。
シングルスは自分一人の戦いだったが、ダブルスは違う。
二人の水準を合わせ、不得意なところを補いつつ、呼吸を合わせなくてはならない。
私は野中の能力をみて無理だと感じたから一人で動いた。
それが間違ってるだなんて思わない。
私は悪くない。
シングルスなら勝っている。
私の中で避けたかったダブルスが突きつけられた。
試合に勝つためにも私がどんどん拾わないといけない。
そう思い、野中の基礎能力をあげる練習をしながらも、試合形式になると距離感やタイミングが合わず衝突を繰り返した。
ダブルスが上手くいかないことに私はむしゃくしゃしていた。
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