生徒会長さまの秘密。

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生徒会長さまの秘密。

此処は第二の性がαのみが通う高校“α区立獅子牙(ししが)高等学校” その名の通り、αが多く暮らす学区に建てられた高校で 我が国屈指の進学校であり、総生徒数は六百、教員数は三十五と… ただでさえ数の少ないαが全国からこぞってこの高校に進学を希望し 集まるという人気校である。 俺、一之瀬 禅(いちのせ ゆずる)は そんな高校の生徒会長を務める二年生であり、当然αである。 身長180、体重67、少々癖のある黒髪に 曽祖父がフランス人のせいか よく見ないと分からない程の青が混ざった黒い瞳に 自分で言うのも何だがこのαだらけの高校にあって 容姿もかなり良く、成績は常にトップクラスと… 一見すると非の打ち所のないほど恵まれている俺だが そんな俺にも一つ…誰にも言えない秘密がある…それは―― Ωからの後天性αだという事… 世にも珍しい…というか世界でも数例しか例がないこのΩからの後天性α… それが発覚した当時は両親はおろか、親戚一同狂喜乱舞の大騒ぎ 元々βの家系だったが故にΩってだけでも大騒ぎだったが それが更にαに転化したとあればそれはもう… 親戚一同は当然この事を周りに言いふらし 俺の秘密は誰もが知るところになる――と思いきや… 国から直々に両親と親戚一同に 俺の事は秘密にしておくようにとのお達しがなされ、俺は事無きを得た が 国が俺の秘密を守るという約束の代わりにと 国から俺にバース性を研究する機関に協力するように言われ 俺は今も定期的にその研究機関に協力という形で足を運ぶ羽目に… コレだけならただのΩからのαへの転化話しで、アメリカンドリームみたいに 人生勝ち組への仲間入りが果たせて良かったね。で済む話なのだが―― 問題は俺の身体… 俺の場合は身体が完全にΩに造り替わった後からのα転化… それが何を意味するかというと―― あるんだよ。まだ俺の中に… 何がって…? 子宮が。 しかもその子宮、俺がαに転化したにも関わらず 今もしっかり機能してるんだとか… ハハ、参ったね。 αでしかも男なのに子宮があるとかホントもう… どーしろっていうんだよこの無用の長物… 俺は何度か研究所で親しくなった人にこの子宮を摘出してくれと頼んだ事があるが 「αでしかも男のキミに子宮がある事そのものが貴重な研究対象何で  摘出は無理かな。」と笑顔で言われ 俺は泣く泣く子宮摘出を諦めた… …きっと俺が男に何かの事故で抱かれたりして子供が出来たら 子供が子宮の中で育っていく様とか…それすらも研究対象になっちゃうんだろうな… あ、何か考えただけで涙が… 俺はクッ…と両眼の目頭を親指と中指で押える でもまあ…αに転化した事により三か月に一回、定期的に訪れる発情期や 突然の予期せぬ発情に悩まされる事が無くなったのは素直に嬉しい… まだ俺がΩだった中坊の頃なんてαに怯え、発情期に怯え… ホント、ろくなもんじゃなかったからなぁ… ――とまあこんな感じで俺は誰にも言えない秘密を抱えたまま αばかりのこの高校で生徒会長をやっている訳だけど… こんな優等生ばかりが集うαの学校でも問題児ってのはいるわけで―― 「…一之瀬…やっぱり此処にいたか…」 ガチャッ…と、生徒会室のドアがノックも無しに突然開き 一人部屋に残って生徒会の仕事を熟していた俺は 生徒会室に入って来た茶髪にピアス 夏服の半袖の隙間から二の腕の部分にジオメトリック系のタトゥーを覗かせた… いかにもな不良スタイルな男子生徒を一瞥する。 「…何の用だ不知火(しらぬい)。  此処はお前の様なヤツが来る所じゃない。帰れ。」 「…相変わらずつれねぇーなぁ~…一之瀬ちゃんは…そこが堪んねんだけどよ。  ところでさぁ~…」 不知火がツカツカと俺の方へと歩いてくるが、俺は微動だにせずソイツを見据える 本当は速攻で逃げだしたかったけど… 此処で逃げたら後で何言われるか分かったもんじゃないし 何より俺は毅然とした態度が求められる生徒会長…逃げる訳にはいかない。 俺はそのまま自分の方に近づいてくる不知火を 険しい表情(を頑張って作って)で(頑張って)睨み続け そしてよいよ不知火が椅子に座っている俺の傍まで来ると スッと俺の耳元にそのニヤけた顔を寄せ、低い…腰に来る様な声で囁いた… 「…そろそろ抱かせてくんない?一之瀬ちゃん…  この匂い…マジで堪んねーんだけど… 「…ちょっと何言ってるのか分から無い。離れろ、不知火…邪魔だ。」 「またまたぁ~…まだ白切る気?俺にはちゃ~んと分かってんだから…  お前が――  Ωだって事。」
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