天才子役が尽きるまで

2/4
前へ
/4ページ
次へ
使用人のようなスーツを着た男性に案内され、少女は建物の中に入った。 男性がひとつの部屋の扉の前で立ち止まる。 「こちらでございます」 装飾のついたドア。それを開けて、少女に入るように促した。 シャンデリアのある大広間だった。壁にはたくさんの絵画がかけてある。アンティークの調度品の上に、絵皿が綺麗に並べられていた。 なぜだか、部屋の真ん中にはベッドが置かれている。 それを取り巻く人相の悪い四人の男たち。この場に似つかわしくない光景だった。 「おう、来たか。座れ」 前歯のない男が顎でしゃくった先――ベッドの足元にはパイプ椅子があった。少女はゆっくりと頷くと、椅子に腰掛ける。 その瞬間、ベッドの横に控えていた男のうち二人が、少女の後ろに回り込み、紐で手をパイプ椅子にくくりつけはじめた。 説明もなくエチュードがはじまったのだろうか。 少女は困惑した表情で、前歯のない男を見上げる。 男はニヤリと笑った。 それを合図にしたかのように、少女の背中に硬いものが押しつけられる。 「ホンモノだ」 少女の背後にいる内の一人が、何かを構える。発砲音がして、部屋の向こう側にあった絵皿が、粉々に吹き飛んだ。 少女の目が恐怖で見開かれる。前歯のない男は、ますます唇を歪ませて笑った。 「なにもお嬢ちゃんを殺したいわけじゃねえ。ちょっとしたさ」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加