16人が本棚に入れています
本棚に追加
「なにを、すればいいんですか……?」
震える声で少女が言うと、ベッドがゆっくりと起き上がりはじめた。横たわった人物の顔が徐々に見えてくる。
目の下の皮膚はたるみ、額と頬には深く皺が刻まれている。髪の毛は剃り上げているのか、ほとんど見えなかった。
目が閉じられている。どうやら眠っているようだ。
「うちの社長は、お前のファンだ。お前がいじめられる役のドラマを見たらしい。お前の泣き顔にひどく心を打たれたそうだ。残念ながら社長はこの通り動けないし、もう長くないだろう。最期に社長を楽しませてやりたくて、お前に仕事を依頼した。社長が起きている時間中、ずっと泣いていてほしい。簡単だろ? 天才子役なんだからよ」
男が舌舐めずりをして、話を続けた。
「もう金は振り込んである。もし仕事がちゃんとできなかったら……。わかってるな?」
少女の背に銃が突きつけられる。
ぶるぶると震えた少女は口を開いた。声を出すことはできないようだった。
パイプ椅子の下――少女の足元に、水滴が垂れた。
「おい、こいつ漏らしやがったぞ」
「もったいねえ。下からじゃなくて上から流せよ」
下卑た笑い声を上げて、男たちは少女を指差した。
前歯のない男が右手を挙げて、それを制する。
沈黙が訪れる。
「で、やるか、やらないか。どちらだ。一応選択肢を与えてやる。ま、あってないようなものだがな」
前歯のない男が薄く笑った。
「や、やります……」
失禁して下半身を濡らしたまま、少女はか細い声を出した。
ベッドに寝ていた老人が、かすかに笑顔を浮かべたように見えた。
最初のコメントを投稿しよう!