天才子役が尽きるまで

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「なにを、すればいいんですか……?」 震える声で少女が言うと、ベッドがゆっくりと起き上がりはじめた。横たわった人物の顔が徐々に見えてくる。 目の下の皮膚はたるみ、(ひたい)(ほほ)には深く(しわ)が刻まれている。髪の毛は剃り上げているのか、ほとんど見えなかった。 目が閉じられている。どうやら眠っているようだ。 「うちの社長は、お前のファンだ。お前がいじめられる役のドラマを見たらしい。お前の泣き顔にひどく心を打たれたそうだ。残念ながら社長はこの通り動けないし、もう長くないだろう。最期に社長を楽しませてやりたくて、お前に仕事を依頼した。社長が起きている時間中、ずっと泣いていてほしい。簡単だろ? 天才子役なんだからよ」 男が舌舐めずりをして、話を続けた。 「もう金は振り込んである。もし仕事がちゃんとできなかったら……。わかってるな?」 少女の背に銃が突きつけられる。 ぶるぶると震えた少女は口を開いた。声を出すことはできないようだった。 パイプ椅子の下――少女の足元に、水滴が垂れた。 「おい、こいつ漏らしやがったぞ」 「もったいねえ。下からじゃなくて上から流せよ」 下卑た笑い声を上げて、男たちは少女を指差した。 前歯のない男が右手を挙げて、それを制する。 沈黙が訪れる。 「で、やるか、やらないか。どちらだ。一応選択肢を与えてやる。ま、あってないようなものだがな」 前歯のない男が薄く笑った。 「や、やります……」 失禁して下半身を濡らしたまま、少女はか細い声を出した。 ベッドに寝ていた老人が、かすかに笑顔を浮かべたように見えた。
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