おっさん観察日記

１日目

それにしても観察というのは何をすれば良い？ 例えば夏休みの自由研究の定番「アリの観察」。それは、巣作りをする様を観てどのような方法で作業しているのか、またその進行状況を単に書き記していけば良いだけ。

しかし、このおっさんに関しては何か行動をしてもらわないと報告としては挙げにくい。
「一日中ゴロゴロしていました」で、済ますワケにいかないであろう。もしそのような報告をあげればこの首につけられた爆弾がいつ爆発してもおかしくはない。何か行動を起こしてくれと今はただ願うしかない...

そんなことを考えていると、いきなりおっさんが動く。

「ガサガサ」とクローゼットから物を取り出しているようだ。しかし、体が邪魔で何をしているのかさっぱり様子が窺えない。初の報告書作成のチャンスを不意にしまいと左右に動きながらおっさんを凝視する。箱か？ハコのような物がみえるぞ。

おっさんはその箱を抱えてこちらに見える向きに陣取り、テーブル横の床に箱を置き、その隣に座った。箱の中から何やら物を取り出す。

「あれはなんだ？」
それは正しく針と糸が収納されている
「ソーイングセット」であった。再び箱の中から作りかけの可愛いらしい布を取り出し針と糸で縫い出した。

「手芸！？」あまりにも意外な趣味に声が出る。あの見た目からは想像がつかない現象に不覚にもメモを取るのを忘れ、ただただ見入ってしまった。器用に布と布を縫い合わせ、チャックやリボンも駆使し、さらにはビーズまで登場しドンドンと形が出来ていく。そして完成。
あれは「ポーチ」だ。

「いや！いつ使うねん！」と
ツッこむのも仕方がない。