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いつの間にか眠ってしまった。
先に目を覚ましたのは結沙だった。
隣でリラが無防備に眠っている。
「可愛い・・・」
寝ているリラの髪にそっと触れて見る結沙。
「柔らかくてサラサラしている。肌も綺麗…」
嬉しくて、ギュッとリラを抱きしめる結沙。
「っ…」
目を覚ましたリラは、結沙の腕の中にいて少し驚いた目をした。
だがそこはとても心地よくて…
温かい腕の中がとても安心できた。
2人がホテルを出たのは深夜を回る頃だった。
特に会話をしないまま駅前まで歩いて来た。
「家どこなの? 送るから」
「・・・いいです」
「何言っているの、こんな時間だよ。家、遠いの? 」
「ないから・・・」
「え? 」
「ないから、私の家なんて・・・」
ギュッと唇を噛んで、リラは答えた。
「ないってどうして? 」
「…盗られたの、親戚の人達に。母が…亡くなったから…」
「え? それじゃあ…」
「もういいから、先に帰って下さい。私は・・・どこか探しますから、泊まる場所」
そっと背を向けたリラ。
結沙はリラの手を掴んだ。
ん? と結沙を見るリラ。
「それなら、俺の家に来たらいいよ」
「はぁ? 何を言っているの? 」
「俺の家の隣り、空いているから。そこに住めばいい。家賃もいらないし、高熱費もいらないし、門限もないよ」
なんなの? どうして、こんなに優しくしてくれるの?
握っているリラの手が少し震えていた。
その手を結沙はギュッと握り締めた。
「リラさん。もう、一人じゃないでしょう? 」
「はぁ? 」
「俺がいるじゃん。言ったでしょう? 付き合いたいって。だから、困っているなら力になるから」
真っすぐな眼差しで見つめてくれる結沙は、とても優しくて…。
またリラの胸がキュンと鳴った。
すると…
キラリと光る氷の欠片がヒラヒラと落ちてきた。
「あれ? 」
結沙は手を広げて氷のけらを受け取った。
結沙の掌に落ちると、氷の欠片はすぐに溶けてしまった。
「ん? 雪? そんなに寒くないけど」
空を見上げる結沙。
それほどではないが、空から雪のように氷の欠片がヒラヒラと落ちて来る。
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