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「ふーん・・・。結ちゃん、とっても良い顔色しているわね」
結沙の顔を見て、ちょっぴり悪戯っぽく笑う紗良。
「何だよ母さん、からかうなよ」
「別にからかってないわよ。それで、どうして隣の家の鍵がいるの? 」
「あの…。新しく入って来た派遣の子が、住むところがないって言うから。隣りを使ってもらおうと思ったんだ」
紗良は結人を見た。
「住むところがないって、どうゆう事なんだ? 結沙」
結人が尋ねると、結沙はちょっと赤くなった。
「うん。お母さんが亡くなって、親戚の人に家をとられたって言ってた。とにかく困っているようだから」
「そうか、それなら別に隣じゃなくても。ここに住んでもらってはどうだ? 」
「それは無理だよ。急に、父さんも母さんも一緒だと驚いちゃうし。それに、良人もいるから」
「別にいいじゃないの。結ちゃんと彼女の事、邪魔したりしないわよ」
「だから、そんなんじゃなくて」
結人と紗良はまた顔を見合わせて、クスッと笑った。
「あ! 彼女はどこにいるの? 」
「玄関の外、鍵持ってくるって、待たせているよ」
「え? 大変。すぐに入ってもらって、夜は冷えて来たのよ。風邪引いちゃうじゃない」
紗良は玄関へ向かった。
「あ、ちょっと母さん。俺が行くって」
結沙が紗良を追いかけた。
騒ぎに良人が部屋から出て来た。
「どうしたんだ? 」
何の騒ぎかと、良人は結人に尋ねた。
「ああ、結沙が彼女ができたらしくてね」
「え??? マジかよ」
「それで、その彼女が住むところがないから。隣りに住まわせるって、鍵を探しに来たんだが。紗良が外で待っている彼女を、迎えに行ってしまったんだ」
「え? じゃあ、彼女も来ているのか? 」
「そうゆう事」
良人は驚くばかりで、言葉が見つからなかった。
「もう、だから言ったじゃない。ほら、早く寝かせてあげて」
紗良の声がして、良人は振り向いた。
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