38人が本棚に入れています
本棚に追加
「あのさ、いくら兄貴でも露骨に聞きすぎだろう? 」
「そうだが、お前ずっと起たないからって、いつもフラれてたじゃないか」
「もう大丈夫だって。初めてだけど、ちゃんと反応したし。それだけじゃないから」
「ならいいけど。でも、もう彼女連れて来たのか? 」
「うん、住むところがないって言うから」
「はぁ? なんだそれ」
「お母さんが亡くなって、家を親戚に盗られたって言っていた。今日、うちの部署に派遣社員で入って来たんだけど。本当に困っているようだから」
「それで、うちに住まわせるって事か? 」
「隣りにって思ったんだけど、母さんがうちでいいって言うから」
良人は、やれやれとため息をついた。
「これじゃ、受験勉強できやしないよ。俺、明日から隣りで生活するわ」
ぼやきながら、良人は部屋に戻った。
紗良はリラをパジャマに着替えさせた。
熱が出て来たようで、リラは呼吸が荒くなっていた。
「母さん、あとは俺が診ているからもう休んでいいよ」
「何を言っているの。看病は女の役目なの、結ちゃんは明日もお仕事あるんだからちゃんと休みなさい。良人の部屋で寝る? それとも、お母さん居ないからお父さんと一緒でもいいわよ」
「うーん。・・・ちょっと考える」
「そう、早く寝なさい。それから、この子の名前は? 」
「麻中田リラさん」
「麻中田? 変わった苗字ね」
「うん」
「でもリラちゃんかぁ。可愛いわね」
紗良はリラの額に張り付いた前髪を、そっと払った。
最初のコメントを投稿しよう!