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「部長! 」
結沙が勇の傍に駆け寄ろうとすると、見えない壁が遮った。
「な、なに? 」
見えない壁に、結沙は驚いた顔をしている。
「邪魔はさせないわ…」
低い声で女性がボソッと言った。
その声に、結沙は振り向いて女性を見た。
長い前髪が目を覆ってよく顔が判らない女性。
「…は、誰? 部長と、何か関係があるの? 」
結沙が尋ねると、女性はフッと笑った。
「た、助けてくれ! 」
勇が叫んだ。
遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
救急車とパトカーがやって来た。
「救急車来てくれたの。…貴方の為に、助けに来てくれたようね。…」
「助けてくれ。頼む、この通りだ。ちゃんと言うから、警察にも話す。だから、助けてくれ」
悲願する勇を女性は鼻で笑った。
「今らさ言うの? 自分はひき逃げ犯だと」
「ああ、ちゃんと話す。だから…助けてくれ…」
女性はじっと勇を見ている。
「ひき逃げって、もしかして。君は事故で亡くなった人の、家族の人? 」
女性は何も答えない。
「…そっか。あの、家族の人なら伝えたい事があるんだけど」
ん? と、女性は結沙を見た。
と…
「チッ。邪魔が来たわ…アンタも逃げた方が良いわよ」
フッと女性は消えた。
「え? 消えた…」
勇は地面に落ちた。
「あ! 部長! 大丈夫ですか? 」
結沙が駆け寄りると、勇は真っ青な顔をして目を開けた。
「大丈夫ですか? 」
数名の警察官がやって来た。
「あ、こっちです」
勇に警察官が駆け寄った。
かろうじて勇は助かったようだ。
結沙は消え去った女性を思いだした。
すると…
「え? 」
結沙は股間が反応したのを感じた。
「な、なんで? …」
驚いている結沙。
何故反応しているのか、自分でも判らなかった。
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