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「あの…」
お参りを終えた結沙に、イディスが声をかけた。
「どうしたの? 」
イディスは何となく、ちょっと照れたように視線を落とした。
「…お返事を…したくて…」
お返事と言われて、結沙は嬉しそうに微笑んだ。
フッと一息ついて、イディスは結沙を見つめた。
「私。貴方のように、お金持ちでもなく。何もとりえもありません。父も母ももういませんし。家も、もうありません。残された資産もそれほどなく、ただの1人の女でしかありません。人と違う力も持っていて、普通じゃないし…。でも…」
結沙を見つめるイディスの目が潤んだ。
「これだけは言えます。…貴方を、心から愛する気持ちは誰にも負けない自信があります。私には愛しかありませんが。こんな私でも、貴方の傍にずっと…いてもいいですか? 」
潤んでいたイディスの目から涙がこぼれ落ち、頬に伝った…。
その涙を見ると、結沙も涙が伝った。
「何を言い出すの。何もいらないよ」
ギュッとイディスを抱きしめる結沙。
「イディスが居てくれるだけで、それだけで俺幸せだよ」
「はい…」
胸がいっぱいになり、イディスは何も言えなくなり、ただ結沙の胸の中で泣いていた。
そんなイディスをそっと、結沙は慰めた。
綺麗な秋空が2人を見守っていてくれるようで。
きっと、イディスの両親も天国から祝福しているだろう…。
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