第一幕 とある就活中の女子大生

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「そういう場面もあるだろうけど、採用面接って受験と違って、基本的に落とすための面接じゃなくて、誰を採るかを決めるためのものだからね」 「えっと……」 「受験で面接ってしたことある?」 「いいえ、筆記だけでした」 「そっか。大学の推薦入試とかは違うかもだけど、中学とか高校受験の面接って、とにかく“変なことを言わなければ受かる”って感じなんですよ」 「あぁ、それはなんとなくわかります。態度とか身だしなみ重視ですね」 「そう。壮大な夢を語れとか、賢いことを言えとか、そういうんじゃなくてね」 「みんなと同じことを言ってれば大丈夫ってことですね」 「そう。それに対して採用試験ってさ、別に定員を満たさなきゃいけないわけじゃないでしょ。いい人材がいなければ該当者なしにしたっていいはずだし」 「落とすためじゃないってそういうことですね。ということは、みんなと同じじゃダメってことになりますね?」 「ダメってわけじゃないけど、少なくとも推奨はできないよね。実際、マニュアルの通りになぞるだけの人に魅力は感じないでしょう?要するに、相手のことをちゃんと知りたいわけ」 「その理屈は理解できましたけど、それがさっきの付け加えることとどうつながるんでしょう」
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