国道１６号

第一幕 とある就活中の女子大生

「こんばんは。どちらまで？」
「保土ヶ谷中央病院にお願いします」
「かしこまりました。急ぎますか？」
「あっ、いえ。病院に用があるわけじゃなくて、家がその近くなもので」
「あぁ、そうでしたか。でもそれなら、この時間ならまだバスもあるんじゃないですか」
「そうですけど……バス停から家までちょっと歩くんです。今日は慣れないヒールで疲れちゃって」
「えっと、間違ってたらすみません。就職活動かなにかですか」
「えぇ、そうです。今年で大学四年生になるので」
「そうですか。それはお疲れ様です。じゃあ車、出しますね。病院の近くまで来たら、ご自宅までの道を教えてください。そこまで行きますから」
「ありがとうございます。お願いします」

「就職活動ってやっぱり大変なんですか？」
「そうですね……まだ本格的に始まったわけではないので何とも言えませんけど」
「すると、今はインターンとかエントリーシートとかそういう類ですか？」
「いや、インターンは三年生のうちにするんですよ。エントリーシートは今まさに書いているところです。今日は企業説明会に行ってきたんです」
「そうなんですね。あの、差し支えなければ詳しく聞かせてもらってもいいですか？」