第一幕 とある就活中の女子大生

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「え、あぁ、会社選びの話です。本当の姿を見せてくれないのはやっぱりズルいよなぁって」 「難しい話ですね。あの、もしお時間あったら、もう少しお話ししませんか?料金はここで止めますので」 「え、運転手さんのお仕事はいいんですか」 「自分は個人営業なのでまったく問題ないですよ。お客さんさえよければ」 「じゃあ、もう少しだけ。私も一人暮らしなので、帰っても特にすることないですし、こんなふうに就活の話をする機会ってあんまりないですし」 「ありがとうございます!そしたら、ここで停まっていてもあれなんで、さっきの国道に戻りますね。適当に車を走らせながらお話しましょう」 「ドライブですね。楽しそう」 「そう言ってもらえると嬉しいです。なんていうか、断られるかなと思いましたし」 「え、そうだったんですか」 「そりゃあ、若い女性を引き留めようとしたわけですし。ましてや初対面で、警戒されてもしかたないでしょう」 「え、あ、そう、ですね。言われてみれば。え、変なことしないですよね」 「しませんよ。だから人目に付く大きな道路に出ようとしているわけですし」 「あぁ、そういうことだったんですね。何にも考えずに運転手さんにまかせる気でした」
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