国道１６号

第一幕 とある就活中の女子大生

「自分で言うのもなんだけど、もうちょっと警戒心を持った方がいいかもよ？このご時世だし」
「それ、友達にも言われたことあります。でもよくわからないんですよね。田舎から出てきたからですかね」
「ん、ちなみにご出身は？」
「福島です。それも都市部から離れた、わかりやすい田舎のイメージそのまんまかと」
「ご近所さんはみんな知り合い、みたいな」
「そのご近所さんも車がないと会いに行けない、みたいな」
「あぁ、素晴らしいですね。いいですね、この辺じゃ考えられない世界だ」
「でしょう？まぁ、こういう都会もこれはこれでいいですけど」
「まぁね。この国道１６号もいいですよ。自分はこの道が好きです」
「そうなんですね。何かあるんですか」
「いや、特に何がってわけじゃないんだけどさ、いろんな町につながってて、いろんな人が生活してる」
「それだけなら別にこの道じゃなくてもよくないですか」
「なかなか厳しいねぇ。もちろんスポット的にもいい場所があるのもそうなんだけど、ここって環状になってるの」
「かんじょう？」
「ぐるっと回るってこと。東京の周り、神奈川と東京、埼玉、千葉をまたいで一周。環状の国道なんて、数少ないんだよ」