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序章
国道16号。神奈川県横浜市西区が起点であり終点となる、首都圏を環状に結ぶ一般国道である。
環状とは言ったものの、東京湾の海上区間があるため、ひとつながりにはなっていない。
将来は「東京湾口道路」という路線で結ばれる計画もあるらしいが、いつ完成するのかはわからない。
総延長はおよそ三百四十キロで、東京近郊の主要な都市を結ぶため、日中は交通量が非常に多く、頻繁に交通渋滞が発生する。
首都圏の郊外・ベッドタウンを結んで膨大な沿道人口を抱えているため、その周辺で様々な人々の生活が存在する。
その中には壮大なドラマや悲劇的な事故もあるが、今回はそんな劇的な物語を話したいわけではない。
この道路を主な仕事場とするとある個人タクシーを営む僕と、偶然乗り合わせた客の間の極々平凡な、それでいて得難い、ほんのわずかな間に繰り広げられる、出会いから別れまでの一幕を語ろう。
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