正社員はじめました

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 この資料ですと、5名の方の契約期限は残り1年余りですよね」 「そうです・・残り15か月です」 「この5名の内、辞められては困る! つまり辞められることで、お店の生産性に支障をきたすような人材はいらっしゃいますか?」 「どうして、そんなこと訊かれるんですか?どうせ契約更新なんて、有り得ないんでしょ⁉」 「いいえ、そうでも有りませんよ・・もし、その人材がこの店の成長に欠かせないと、店長が契約更新を希望されるなら・・今後本社としては柔軟に対応したいと考えています。だからお尋ねしているんです」 「えぇ、そりゃ有難いですね! 折角指導して、ようやく全体が把握出来るようになったと言うのに・・これまで幾度とも無く、どれだけ悔しい思いをして来たか・・ホントそれが本当なら有難いことだ、これで我々も教育のやり甲斐が有るって言うものです!」 「でも、真の実力を評価して頂かないとだめですよ・・店長の偏見だけの判断は認められませんので、この制度を確かなものにするためにも、その点だけは厳守してください」 「ハイ、分かりました、ご苦労様です」 その言葉の直後だった、小野田店長は派遣社員の名簿を見つめながら、改めて言った。 その一言がとても印象的だった。 「こうして派遣さんの名簿を見るとね・・あの人も、この人もみんな、一生懸命に頑張ってくれていたのを思い出します。特にこの子なんか、色んなアイデアを提案してくれましてね・・そりゃイイね!って褒めてあげると、頼みもしないのにポップまで作っちゃってさ、ホント凄い人たちが通り過ぎて行きましたよね・・」  特にこの子なんか・・と店長が指さすところへミキと太田は目をやった。 なっ、なんとそこには「山田ミキ 25歳」と記述されていた。 ―完―
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