劇場版とあるポメラニアンの憂鬱「綺羅の消失」

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劇場版とあるポメラニアンの憂鬱「綺羅の消失」

 綺羅がいなくなってから二週間が過ぎた。  土日は家族総出で綺羅の捜索をするけれども、町のどこにもいなかった。 「綺羅、おまえ、どこで何してるんだよ」  僕が綺羅の写メを見て呟くと、「なら、俺様が教えてやるよ」と、声がした。だが、部屋を見回しても、誰もいない。 「こっちだこっち!」  机の上に、黒いマジカルハットと黒い服に黒のブーツをはいた小人が立っていた。 「……僕、おかしくなったのかな」言いながら、頬をつねった。 「安心しろ、おかしくなっていない。俺様は、死神ダイスだ」  どうやら熱があるみたいだ。と思い、額に手を当てるが熱くはなかった。 「本当に、死神なの?」 「だからさっきからそう言っているじゃないか。綺羅はな、俺様が預かった。返してほしければ、おまえの魂を俺様によこしやがれ」    ――どうして? と、訊いてみる。  すると、あのポメはおまえのせいで死にたがっていた! という、僕の綺羅への裏返った愛情を、指摘されたのだ。
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