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 今、あたいは市中引き回しの刑の真っただ中である。 「散歩楽しいな、綺羅」 「ワン」  辛いのである。 「そうかそうか、綺羅も楽しいか」  犬の話はちゃんと聞け! あたいは今、ウンコしたいのである。さっきから我慢してるのである。漏れそうなのである。ってかこいつ、手ぶらなのだが、いいのか、それで。ウンコの後始末はどうする気だ。マナー違反ではないのか。食べるのか? 食べるんだな? よぅし、食べるに決定! 「ちょっと公園で休むか」  よし、ウンコしよう。  ん、ん~。ぷぅう。  オナラだった。 「綺羅、女の子なんだから公衆の面前でオナラするのはどうかと思うんだけど」  屁こき魔のお前に言われたくないのである。以前、お前、あたいの顔面に屁をこいたろ。あのときの臭さと言ったらもう、殺意しか沸かないのである。一生恨むのである。 「そういえば、明日母さんが、犬の気持ちがわかるワイヤレスイヤホン『スーパーワンワン』買ってくるって。これで僕たちの絆もダイヤのように固くなるな!」  初めからひび割れたガラス細工の絆だろう。だいたい、犬の気持ちがわかるなんて怪しいのだ。その、スーパーなんちゃらって奴、ホントに大丈夫なのか? 「あ、綺羅のトイレグッズ忘れた」  バカめ! 今頃気づいたのか。 「あと少しで家に到着するから、我慢してくれな、綺羅」  こいつは鬼なのである。あたいの憂鬱はつきない。
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