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劇場版とあるポメラニアンの憂鬱『綺羅の消失』その二
――綺羅、お前、どこに行ったんだ。
家じゅう、どこを探しても見つからなかった。まさか、外に? でも、いったいどうやって?
傘をさして、綺羅の行きそうなところを探してみようとしたところで、綺羅の行きそうなところってどこだ? 散歩コースを探してもどこにもいなかった。
僕は、本当は綺羅のことを、わかってなかったのだろうか? 知ったかぶりして、綺羅のためとか言いながら綺羅の嫌がることばかりやってきたのだろうか? 綺羅はもしかして僕のことが嫌いなのであろうか?
いや、ここで不安になっても、何も始まらない。
僕は、捜索範囲を住宅街から駅の近くの小さな商店街に移した。道行く人たちに、スマホの綺羅の写メを見せていくけれども、誰も見てないと言う。
僕は公園のベンチに座り込み、小さく呟いた。
――誰か、誰か誰か、誰か助けて!
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