ジェネリック

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不老不死は人類の永遠の夢。 必然なのか偶然なのか不老不死の薬は開発され、後発薬が次々と発売されると当然のように安価になった。 一部富裕層だけが手にすることのできた不老不死の夢は、貧困層にばらまかれる現実となったのだ。 「……どうだ」 「どうもこうもない。今年もまた税金が上がった。それを賄えなければ薬をもらうだけだ」 「そうだな」 顔を合わせるのは年に1回だけ。その1回をもう何回重ねただろうか。集まる顔ぶれはそう変わることはなく、どの顔にも暗い表情が浮かんでいる。囁きのようなひそやかな声が時折聞こえるだけで概ね人々は押し黙り順番待ちの列が進んでいくのを待っている。 「……人類の夢。人類の悪夢の間違いだろう」 誰かがつぶやく。 表に表す者、表さない者、反応はそれぞれだったがそこに集った人々は皆、つぶやきを否定することはできなかった。 少子化は止まらなかった。 生まれる子供が少ないということは労働力も少ないということ。 では、国民が減るなか国の機能を維持していくためにはどうしたらいいのか……。 今ある労働力をそのまま維持できれば良いのではないか? 単純だが難しい問題。 それを。 非常に安価になったジェネリック薬が解決した。 「死亡税は?用意できない?ではあちらの窓口で薬を受け取ってください。ーー次の方どうぞ」 役人はいつでも事務的だ。 今年も上がった通称死亡税。 葬式代や火葬代墓代などを用意しないと人は死ぬことを許されなかった。 年に1度の国民命日の日。労働者は役所に列を作った。 「ーーこれを」 生活するには十分すぎる賃金ではあるがとにかく死亡税は莫大だ。遺体を燃やすと有毒ガスが出るらしい。環境を破壊するガス。それの中和剤はとても高価だ。国土は狭く墓地には限りがある。人はきちんと送らないと不死者として蘇る……。 不老不死の薬があるこの時代に不死者!死人が蘇る!! 「必要な額は揃ってるはず」 役人はカードを受け取りそこに入っている金額を確認した。 「……あぁ」 「死亡税が先週上がったのをご存知ない?これでは足りません。ではあちらで薬を受け取る手続きをお願いします。ーー次の方どうぞ」 子供が生まれないのならば。 労働者が減っていくのならば。 今いる労働者の数を減らさない方法を考えればいい。 ーーちょうどよく最近ジェネリック薬が発売されたではないか。 薬を飲まない選択肢はない。 飲まなければ法で罰せられる。 窓口で薬を受け取り、確実に摂取するのを医師が確認する。 やっと、この薬から解放されると思ったのに……。 手のひらには小さな赤い錠剤が2つ。 来年はこれを飲まずにいられるだろうか……。 ため息をついて、薬を口に放り込んだ。 ーー58回目の28歳が始まる。
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