からたちの歌

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 彼女とコウスケと僕。いつも一緒にいた。そうだ。さっき出掛かったまま消えていったのも、彼女の記憶だ。 「この曲の最後、どんな風に終わるんだっけ? それと彼女」 「終わらないよ」  彼女の名前も聞こうと思ったのに、最初の質問の答えが先に返ってしまった。 「終わらないって?」 「この曲はずっと続いていくんだよ」  振り返ると、コウスケは笑っていた。楽しそうな、無邪気な表情。それなのに黒い瞳が静かに据わっているようで、そのバランスの悪さに不安になる。 「……コウスケ、彼女のことを覚えている?」  知らないよ。  そう言われるのではないかと、半ば身構える。けれどコウスケはすぐにうなずいた。 「いつも俺達、一緒にいた」  優しい表情。でも、瞳の色は暗くよどんだままだ。 「俺とお前と、あいつ。小さい頃から一緒にいた。この曲、いつも一緒に歌っていたよな」 「じゃあなんでさっき、誰だよって聞いたんだよ」 「お前が忘れたからだろ」
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