からたちの歌

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 即答され、僕は言葉に詰まってしまう。コウスケは感情のこもらない口調で、ただ事実を告げていた。その言い方に、僕を責める気持ちは感じられない。だからこそ、不安が増してくる。  僕は大切なことを、忘れている? 「仕方ないよ。気付いてしまったんだから」 「なにを?」  問い掛けるけれど、答えが返ってくるとは思えない。コウスケの言葉はまるで独り言のようで、僕ではなく自分に向かって言っているようだった。 「気付いて、お前は忘れることにして、あいつは逃げることにした。つまんない。いつもお前達はそうなんだ。大きくなると、すぐにそうやって離れてゆく」 「コウスケ……? コウスケ」  呼びかけを繰り返すと、ようやくコウスケは僕を真っ直ぐ見つめ、宣言するように言った。 「だから俺も、俺のやりたいようにすることにしたんだ」  輪唱のメロディが、さっきより大きくなる。そのせいか、自分の考えが上手くまとまらない。僕は少しずつ焦り始めていた。  コウスケは、なんの話をしているのだろう? そして彼女。 「教えろよ。あの子は、誰だ? なんて名前で、どこに住んでいる?」
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