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壱
「ここが、あいつの言ってた《磐座神社(いわくらじんじゃ)》か」
夜中の神社に訪れた男の名は『早見 貴志』
某オカルト雑誌の編集者であり本人もオカルトが趣味である。
彼には二つ上の兄がおり、その兄からある噂を聞き真相を確かめるべくやってきた。
「しかしまぁ……随分と寂れた所だな。狛犬なんて首から上が無くなってら」
いくら好きでも真夜中に頭の無い狛犬を見るのはくるものがある。
が、たじろいでいるわけにもいかないので周囲を散策することにした。
ちなみに、彼が兄・翔太から聞いていた話というのはこういうものだ。
《朝と夜の境界に神様の世界と人間世界の境界を越えると、常世と現世の狭間に飛ばされ二度と帰ってこられなくなる》
何処にでもある話だし帰ってこないものがいるとしても確かめようがない
つまりよくある眉唾物でオカルトの正道ではある話だ。
貴志もわかってはいたが特にネタも無い中、近場でもあるので来てみた
というのが実のところだ。
まだ時間はありそうなので境内を見て回っていたが古びている以外、特に何も見つけられなかった。
「少し歩き疲れたな……ん、そろそろか」
貴志は時計を見る。
針は四時四十分をさしており朝と夜の境界……日の出のマジックアワーが近づいてきた
そのタイミングで鳥居をくぐる━━
おそらくそういうことであろう。
鳥居に近付いてみると少し明るくなってきたのとあって痛みが目立っている
汚れや欠け、その中に紛れて何かが彫ってあるのを見つけた。
おそらく文字であろうが読めそうにはない……そして、時間になった。
「……行くか」
意を決して貴志は鳥居をくぐった
《とおりゃんせ とおりゃんせ
ここはどこの細道じゃ
天神様の細道じゃ
ちっと通してくだしゃんせ
御用の無いものとおしゃせぬ
この子の七つのお祝いに
お札を納めにまいります
行きはよいよい カエリハコワイ
こわいながらも
とおりゃんせ とおりゃんせ》
どこからか聴こえてきた歌で目を覚ました貴志がいたのは神社でも自分の部屋でもなく、見覚えのない古びた和風の部屋であった。
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