プロローグ

2/4
88人が本棚に入れています
本棚に追加
/269ページ
長らく人の手が加えられていない廃れた校舎。 材料に使われている木にはカビが生え、少し動くだけでもギシギシと音がなる。 「上手く…行くのかな…」 何かに怯えるような震える声。 言葉自体を聞かずとも、抑えきれぬ不安が感じ取れる。 「大丈夫。私達はこんなところで死ぬわけには行かないのよ。仁科さんは援護よろしく頼むわね」 「そうだぜ!いざという時は俺が仁科ちゃんを守るからさ!」 「お前、そんなこと言って真っ先に逃げだしたりすんなよ?」 「そ、そんなことしねーよ!俺だってやるときゃちゃんとやんだからよ!」 震える少女を勇気づけるように彼らは励ました。 恐怖、そして不安。 それはここにいる全員が抱いているもの。 なのに何故、それを押し殺し、仲間を励ませるんだ? 血のつながりなどない。 共に過ごした日は浅い。 ほんの少し、語らい、遊び、笑いあっただけ。 ああ、そうか。 友情とは、友人とはこういうものなんだな。 俺はそれを欲していた。 しかしそれは、本心からだったのだろうか… 心を重ね、感情を共有し、手を取り合う。 ただ一人、俺の目にだけは、深い闇が広がっていた。
/269ページ

最初のコメントを投稿しよう!