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長らく人の手が加えられていない廃れた校舎。
材料に使われている木にはカビが生え、少し動くだけでもギシギシと音がなる。
「上手く…行くのかな…」
何かに怯えるような震える声。
言葉自体を聞かずとも、抑えきれぬ不安が感じ取れる。
「大丈夫。私達はこんなところで死ぬわけには行かないのよ。仁科さんは援護よろしく頼むわね」
「そうだぜ!いざという時は俺が仁科ちゃんを守るからさ!」
「お前、そんなこと言って真っ先に逃げだしたりすんなよ?」
「そ、そんなことしねーよ!俺だってやるときゃちゃんとやんだからよ!」
震える少女を勇気づけるように彼らは励ました。
恐怖、そして不安。
それはここにいる全員が抱いているもの。
なのに何故、それを押し殺し、仲間を励ませるんだ?
血のつながりなどない。
共に過ごした日は浅い。
ほんの少し、語らい、遊び、笑いあっただけ。
ああ、そうか。
友情とは、友人とはこういうものなんだな。
俺はそれを欲していた。
しかしそれは、本心からだったのだろうか…
心を重ね、感情を共有し、手を取り合う。
ただ一人、俺の目にだけは、深い闇が広がっていた。
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