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向日葵が燃える。その場にいたのは二人だけ。彼と私の二人だけ。
*
私が生まれ育ったのは典型的な田舎だ。
小さな集落。買い物には車で三十分、田畑が広がり、人と人とのつながりが濃密。そんなありきたりな田舎。
周りの家と大差ない木造平屋建ての家に私は生まれた。ただ、我が家には一つ特別なものがあった。
向日葵畑だ。
それは家の裏手にあって、毎年大輪の花を咲かせていた。見事なものだった。
祖父の自慢で宝物。孫娘の私にその名を付けたくらいだ。
それに火をつけた人間がいる。
私の同級生の少年。
向日葵畑は全焼。村は大騒ぎになった。狭い村だ。様々な憶測が飛び交い、やがて、暴力的な非難となった。
最後まで無罪を主張した少年。問題児だった彼の言い分が受け入れられることはなかった。
彼とその家族は村にいることができなくなった。彼らは逃げるようにこの地を去った。
平和すぎる村のある夏のこと。その夏は私にとっても忘れがたい。
二十年前、ひと夏の思い出。
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