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新しい生活始めました
俺の名はショウ。苗字は、、、まぁ良いだろうショウだ。
23歳の会社員だった。
だったというのもつい昨日会社をやめたからだ。
辞めた理由は簡単。会社内でいじめのようなものに会っていたからだ。
朝会社に行けばこっちに向かって「また来たのかよ」など罵倒され、机には他の人の倍以上の紙の束。お昼もほぼ食べずにやっても残業で2.3時間は必ず掛かる。隊長など崩せば帰れない日もあった。当然休みは月に2.3回程度。
書類を出せばいちゃもんを付けられ、雑用でこき使わされたり等々。
金銭的に余裕があるかといえばそうでもないが精神的にそろそろ限界だった。
そんなわけで会社の上司の机に思い切り人生で最大の音を出して退職願を叩きつけ机の上の書類を全て床に落とし踏みつけてそのまま全力で会社を後にした。
こうなるのも理由があり俺はそれがなにか分かっている。
つまり顔だ。とにかく元々無表情で怖いからだ。
きっかけは恐らく会社の中でもトップと言われている女性に声をかけられた時に緊張して上手く話せなかったのだが元々避けられていた上に話しかけてもらっておきながら他者から見れば素っ気なく対応したとみられたのだろう。
次の日から上司や同僚にまで散々な目に合わされた。
身長も高いため更に怖いのだろう。
そして現在アパートの一室でこの後どうするか悩ませていた。
別の就職先を考えてもいいが再び同じ目に会うのは怖い。
どうしようかと悩んでいると携帯が音を鳴らした。
「はい、もしもし」
「ショウ、都会での暮らしはどうだね?」
「あぁ、、、会社辞めたよ」
電話越しでお母さんがびっくりしている。当然だろう。しかし
「そんなことなら田舎にさ帰ってこないかい?」
そう息子の退職を聞いて驚いてはいたが元々押し切る形で都会に出たのだ、ガタが来るとわかっていたのだろう。
「あぁ、、、」
「どうするね?お母さんもお父さんもいつまで持つかわからんし、、、」
「そういう話やめろよ」
そう言って電話を切ってしまったが心配やどうしようもないことや久しぶりに落ち着きたい気持ちもあり帰ることにした。
一週間後
「お世話になりました」
「いえいえ、また何かあればいらっしゃい」
そう言って大家さんはにこやかに俺を送り出してくれた。
そのまま駅で電車に乗る。
「終点○○駅ー」
出発してから3時間後、ようやく長い時間をかけて故郷へ戻ってきた。
目の前にあった大きな建物は取り壊されて何も無くなってしまい、行きつけだった散髪屋も魚屋もシャッターが降りていた。
都会では日々進化し、変ったとして賑やかだが田舎のこんな所では進化なんて有りはしないし高齢者ばっかりになり継ぐ人も居ないため衰退の一途をたどるしか無い。
「変ったな、、、俺もか」
家に向かいながら考える。
昔は都会に憧れて「成功させてくる」と言って親の反対を無視して飛び出すほどの意欲や憧れがあった。そして今は会社での過酷な環境から絶望や都会への失望しか残っては居なかった。そんな自分の姿がどこかこの町に重なり寂しいようなしかし同時に親近感も感じる。
そのまま徒歩で40分歩き家に着いた。
「はーい」
インターホンを押すと中から声があり母が迎えてくれた。
「あれ、帰ってきたの?」
何も連絡せずに来た自分に驚きつつも中に入れてくれた。
「ごめん、都会に馴染めなくて」
「いいんだよ、お前にはお前が一番輝けるところがある」
「ありがと」
普段感謝の言葉を口にしないため恥ずかしい気持ちもあったが余りためらいなくするりと口の間から感謝の言葉が出た。
こうして生まれた家に戻って暮らすという新しい生活が始まった。
(戻ったと言ったほうが良いのだろうか)
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