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01.ひと夏の想い出
ラジオからは夏の到来を告げる、男性グループのヒット曲が流れていた。
夏と言ったら、彼ら。
冬と言ったら、彼女。
クリスマスと言ったら、あの御大。
最早、季語になるのではないかという位、特定シーズンに流れる楽曲がある。
自分の好みが勝手にレコメンドされる音楽アプリと違う風情がラジオにはあった。
海へ向かう車の中、夏唄を流しながら、炭酸水を喉に流し込む。
今年の夏も、そんな過ごし方をするはずだった。
だが、今年は海開きせず、海の家もなく、ひと夏の想い出をつくることも出来なくなった。
もう、車を出すこともできないだろう。
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