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マキ自身は自分の死を覚悟して生きてきた。子どものときから死を意識してきたのだ。実際死ぬときも、「ついにこのときがきてしまったのか」と思ったくらいだ。
けれどレイは違う。きっと自分がこんなに早く死ぬなんて思っていなかっただろう。戸惑いと衝撃。それはきっとマキよりもずっと大きい。
「じゃあ父親のことが未練なのか? ずっと父親のそばにいたいとか、そういう」
それであれば、無理に成仏なんてしなくてもいいだろう。父親が死ぬそのときまで、この世に残って一緒にいてやればいい。
マキはそう思ったが、レイはまたしても「うーん」と唸った。
「違うのか?」
「いや、最初はそうだったと思うんですけど、今はもういいかなって気がしています。お父さんがかわいそうとか、心配とか、そういうことはもう思ってないです」
どういうことだとマキは首を傾げる。レイは困ったように笑った。
「お父さん、私のこと悲しんでくれていたし、寂しそうにしていました。でも、ちゃんと前みて歩いているんですよ。うじうじしていたら私が怒るだろうからって、お父さんは今も必死に生きてる。私が、お父さんのことが心配だって言うのが失礼なくらいに、お父さんは頑張って生きていました」
だからもういいんです、とレイは言った。
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