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「藤田くん、待たせてすまない。太一、こちら藤田くん。高校2年生だそうだ。藤田くん、こっちはうちでアルバイトをしている北谷太一だ」
「こんにちは、北谷です」
「どうも、藤田です」
「それじゃあ藤田くん、話を聞かせてくれるかい」
「はい、ええと、何から話せばいいかな……。今日は学校の友達と遊びに来たんです。今朝9時頃にホテルに着いて荷物を置いて、すぐに泳ぎに来たんですが、そこで見たんです……」
「何をだい?」
「亡くなった同級生を」
予想していなかった展開に、さすがの店長も言葉が出ないらしい。
「名前は、奈緒と言います。小学校六年生の終わり頃、彼女からラブレターをもらったんです。元々仲はよかったんですが、妙に意識してそっけない態度をとるようになってしまって。返事もできずにいたんです。結局卒業するまでろくに話もしませんでした。向こうは毎日声をかけてくれていたのに……でもずっと気になっていて、中学に入学すればまたすぐ会える、そこで思い切って話しかけようと思っていたんですが……」
「会えなかったの?」
「はい。中学校の入学式の1週間前、奈緒が亡くなったって噂が流れ始めました。お母さんと二人で住んでた家は空き家になってて、だれに聞いても確かな話はわからなくて」
「その子が今日の朝ピンピンしてビーチを歩いていたと」
「はい。すごくびっくりしました」
「間違いなくその子だったの?」
「もう何年も経っているので、絶対かと言われると自信がないですが……」
「でも、こうしてここに依頼に来るくらいには確信があるんだね」
「はい」
「よし、わかった! おい、太一!」
ぎくっ。
「話は聞いただろ。依頼だ。とりあえずその奈緒ちゃんを探してこい」
「とりあえずって……いや、だって亡くなったんでしょ。おれ幽霊は専門外で」
「おれだって専門外だよ。それにまだ幽霊と決まったわけじゃないだろ。藤田くん、奈緒ちゃんの特徴は?」
「そうですね、身長は160㎝くらいかな。やせていて、水色のワンンピースタイプの水着に、麦わら帽子をかぶっていました。髪型は帽子に隠れてよくわかりませんでしたが」
「太一、わかったな」
「いやいやいや、そんな女の子数え切れないほどいますよ。どうやって探せっていうんですか」
「何言ってんだ。そんなのいつものことだろ。ダメでもともと。まだ昼過ぎだし、ビーチにいる可能性は十分ある。今日はおれも一緒に探してやるから」
「店長も抜けたら店はどうするんですか!」
「大丈夫だ、どうせランチタイム以外は暇なんだ。もうすぐ買い出しに行ってる真衣ちゃんも帰ってくる。藤田くんは奈緒ちゃんのことをずっと後悔してきたんだ。力になってやりたいじゃないか」
「もちろんぼくも探します。幽霊でもなんでもいいんです。会って、昔のことを謝りたいんです。お願いします」
「はあ……わかりましたよ」
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