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「あ、やっと戻ってきた! いくらピークは過ぎてるからって二人して店ほったらかしすぎじゃない? ちょっと交代してよ!」
真衣だ。ちょっと交代とはいうが、店内に客は二組しかおらず、どちらも食べ終わってくつろいでいるところだ。もうしばらく抜けていても大丈夫だろう。
「真衣、ちょっと話があるんだけどいいか?」
「何よ急に。今はお客さん少ないし、かまわないけど」
太一達は他のアルバイトに一言詫び、お客さん達から少し離れた座敷席に腰を下ろした。
「で、どうしたの。あらたまって。こちらの男の子はお客さんでしょ?」
真衣と同じく不思議そうな顔をしていた店長と藤田だったが、藤田は真衣の正面に座ると、はっと息を飲んだ。
「藤田くん、どうかな。藤田くんが見たのはこの子じゃないかい」
「そ、そうです! その通りです! 間違いありません!」
「なんだって! ほんとかい? でも名前が違うじゃないか。この子はうちでアルバイトをしてくれてる、西宮真衣ちゃんだ」
「探してた? わたしを?」
真衣はきょとんとした顔で藤田を見た。
「実は藤田くんが知り合いの奈緒って子と真衣を見間違えたみたいでさ」
藤田が答える前に、真衣が反応した。
「ナオって……藤田ってひょっとして、藤田浩介くん?」
「はい、そうです」
「それじゃあナオっていうのは……有本奈緒のことかな?」
「そ、そうです! 真衣さん、奈緒をご存知なんですか!?」
「真衣ちゃん、いったいどういうことだい?」
真衣は深呼吸をして、静かに答えた。
「有本奈緒は私の妹です」
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